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八町大路火災からの復興 その1「京染のふじわら」

  • 執筆者の写真: 藤谷 愛
    藤谷 愛
  • 3月26日
  • 読了時間: 6分

更新日:4月20日

昨年11月末に起きた臼杵城下町の商店街八町大路での大火災。復興への道はまだまだ始まったばかりで、私も前回のブログでやっと文章に書けるくらいに気持ちが戻ってきました。


前回は八町大路で月に1回行われている「幟(のぼり)市」について書き、今回は復興を頑張っている店舗について、合計2回に渡ってその復興の様子を書こうと思っていました。

しかし、取材を行ってみると被災し復興を目指す店舗には長く続くお店と人の歴史があり、なかなか1回で全てのお店について語ることはできない物語があることに今更ながら気づきました。


というわけで、これから復興が進む中で被災したお店(取材が可能な)の歴史と今後の展望について、月に1店舗ずつご紹介できればと考えています。


お店の歴史を知れば今の仮店舗や今後新店舗を再建した時などに訪れる楽しみがさらに倍増すると思います。


今回は八町大路火災復旧対策会議の代表幹事でもある藤原紳一郎さんと妻の克子さんのお店「京染のふじわら」についてご紹介します。

京染のふじわら
笑顔が素敵な店主の藤原紳一郎さんと妻の克子さん

1937年創業の京染店

「京染のふじわら」は現在の店主である紳一郎さんの祖父・関生さんが創業した京染店。元々は現在の店舗の場所にあった福良屋という呉服店で番頭をしていた関生さんが暖簾分けをしてもらい、隣接する土地に1937年に開業したのが始まりです。

京染のふじわら
2019年のうすき雛めぐりで撮影させていただいた時の旧店舗(平成14年築)

紳一郎さんの父・哲さんは高校を卒業して京都に修行に出ましたが、その直後に哲さんのお母さんが急逝。臼杵に戻ってすぐに家業を手伝いながら、同時に8人の弟妹を親代わりとなって育てることになりました。

哲さんは選択の余地なく家業を継いだ為、その長男である紳一郎さんが「自由な選択肢を与えてくれたと思う」と言うように、跡継ぎのプレッシャーなどは無かったそうです。しかし、当の紳一郎さんは小学生の時の作文に「着物の生地をお客さんに販売する」という未来像を描いていたようで、実際に大学を卒業後、現在の道へ進むことになります。


「京染のふじわら」とは?

私自身は着物分野の専門用語に疎く、そもそもお店の名前である「京染とは?」というところから紳一郎さんにお話を伺うことになってしまいました。


例えばネットや電話もそれほど普及していなかった時代、臼杵で「着物を作りたいなぁ」と思ったらその順序は以下のようになっていました


①悉皆(しっかい)屋に出向きどういう着物が欲しいかデザインや色などを相談する

②悉皆屋が客の要望に合う京都の染め物屋に伝える

③仕上がった反物が悉皆屋に届く

④悉皆屋が着物を仕立てるか、客は反物だけを買い取り仕立ては自己手配(又は自己制作)


ちなみに「悉皆屋」というのは着物が出来上がるまでの工程を管理する着物のプロデューサー的な存在で、加えて購入された着物が長く使えるようにメンテナンスを施したりリメイクを行ったりもするお店となります。

「京染のふじわら」は今でこそ成人式の為にレンタルを行ったり、付属するバッグや草履なども販売したりする「呉服店」の役割もしますが、もともとはこの悉皆業にあたるお店でした。ですので、現店主の紳一郎さんも大卒後5年間、京都の会社で悉皆業の修行を行ったそうです。


反物作りの染物屋さんというのもいろいろあるそうで、その中心地はやはり京都。京都で細分化された着物染めのいろいろな工程を知ることで、臼杵からの細かい要望を通して希望通りの反物を手に入れることができるのです。そのプロデューサー的な仕事をしてくれるのが「京染のふじわら」というわけです。


被災後の今

自宅兼店舗だった「京染のふじわら」は今回の火災で残念ながら全焼してしまいました。私の実家のあるエリアが管轄でもある消防第一分団副分団長でもある紳一郎さんが、自宅兼店舗が焼けていくのも顧みず、延焼を防ぐために消火活動を行う姿に目頭が熱くなったのは私だけではなかったと思います。

そして瓦礫の撤去作業で最後に残されたものも紳一郎さんの3階建てのお店でした。それが3/23~25にかけて取り壊しが行われ、紳一郎さんのお母さんもその光景を目に焼き付けていました。

火災のがれき撤去
昭和53年築の鉄筋コンクリート3階建ての店舗の取り壊しの様子

自宅とお店の二つの思い出の品々と、着物をはじめとする多くの商品、そして反物のデザインや色の見本である「巻見本」などがすべて焼けてしまいましたが、紳一郎さんと妻の克子さんを取材させていただくと「前を向いて復興しなくてはいけない」という想いが伝わってきて、なぜかこちらが元気づけられる気持ちになってきます。

雛飾り
「うすき雛めぐり」で店舗を飾った雛飾りたちは倉庫に入っていて難を逃れた

そして今お二人は同じ商店街の仮店舗で元気に営業を続けています。

京染ふじわら
サーラデうすきの4軒隣にある仮店舗

もちろんこれまでと同じく着物の注文、メンテナンス、リメイクは行っています。

着物リメイク
売り物ではないけれど、克子さんがリメイクした暖簾は生地の感触がとても良い

特にリメイクに関しては着物を洋服やネクタイ、小物などに変えることも可能で、絹生地の場合にはそれに特殊加工を施して洗濯も簡単にできるようになるそうです。着物関係の相談事があればぜひお店にお出かけしてみてください。


また、紳一郎さんのお姉さん(和裁士)の着物リメイクバッグもおすすめです。デニム生地にいろいろな着物生地を合わせ、丈夫で素敵なサコッシュに出来上がっています。

着物をリメイクしたサコッシュ
古布や着物生地はいろいろあるのでお気に入りを見つけに行こう
着物リメイク雑貨
お値段もプロの手作りなのにかなりお手頃!

お店の今後

「京染のふじわら」は元の場所にお店を再建予定です。

おそらく完成は来年以降になると思いますが既に再建に向けての活動をスタートさせています。それまでは現在の仮店舗で営業を行っていくのですが、これまでと同じ業務に加え、今後は古着や古布の販売も行っていく予定だそうです。アンティーク着物や各地の絣生地の販売など、世の中の布小物や手作り雛を制作するハンドメイド作家さんたちにはかなり重宝するお店になりそうな予感。私も雑貨店を運営しているので、「京染のふじわら」と何かコラボして面白い企画が出来たらいいなぁと考え中です。


「京染のふじわら」の新展開や私の「ケレシュ雑貨部」とのコラボ企画などがあるときにはぜひ当ブログやSNSでも発信していこうと思います。

今後の「京染のふじわら」の展開にこうご期待!


<京染のふじわら>

仮店舗の住所:臼杵市臼杵207番地 *サーラデうすきを正面に見て左に4軒隣

電話:0972-62-2622


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