7月19日~21日に行われた福良天満宮の夏季例大祭。毎年7月25日直前の金・土・日に行われています。
八町の唐人町に実家がある私は、祇園祭(八町の子供たちは「纏山車(まといやま)」で小学6年まで毎年参加)で全てのパワーを使い果たしていたのか、福良天満宮のお祭りには一度も行ったことがありませんでした。
2年前の広島旅行でお神楽を観てなかなか面白いと感じていたので、福良天満宮の夏祭りではお神楽が観られると聞き、移住後とても楽しみにしていたイベントの一つです。
今回は、予想以上に楽しく贅沢な催しが目白押しだった、福良天満宮の夏祭りをご紹介します。
福良天満宮とは?
元々は1600年ごろに開山された「称名寺」というお寺が始まりですが、明治元年、神仏分離令発令により天満神社となりました。昭和になって天満宮と社名を変え、現在に至ります。菅原道真公(天神様)をお祀りしていることもあり学問厄除けにご利益があるとのことで、新年や受験時期には多くの参拝客が訪れますが、近年では一風変わった「あかねこ」もお祀りしています。
「あかねこ」というのは明治初期の商売上手な臼杵商人のことを指す、という一説があり、それらの商才ある臼杵商人の魂を「あかねこ」として「招霊赤猫社」(おがたまあかねこしゃ)を平成11年に建立しお祀りしています。これがイマドキの「インスタ映え」になるかどうかは分かりませんが、境内にある大小の真っ赤な猫の像や赤猫石が並ぶ一角は小さいながらも異彩を放っています↓
そして昭和世代には懐かしいあの「寅さん」も福良天満宮に来ました!第30作の「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」で寅さんが啖呵売をしたその場所には、ロケのエピソードなどが記された記念碑もあるのでお見逃しなく。
この映画がきっかけとなってその後に結婚をした「ジュリー」こと沢田研二さんと田中裕子さん。福良天満宮って良縁のご利益もあるのかも。
夏祭りの見逃せない伝統演目(1)「柴引」
さて、本題の夏祭りに話は戻ります。
3日間ある夏祭りですが、今年は残念なことに最終日のお昼過ぎまでずっと雨だったので、3日目の夜に出かけました。例大祭である最終日は、朝7時の「お目覚め神楽」から始まり、深夜0時近くまで数多くのお神楽や演舞が行われる中身の濃さです。
その中でもやはり「柴引」は臼杵っ子の記憶には残るものではないでしょうか。
今回初めて福良天満宮の夏祭りを観たのですが、私の「柴引」の思い出は祇園祭の御旅所での柴引になります。
お神楽の「柴引」という演目は、古事記や日本書紀に出てくる「太玉命(フトダマノミコト)」が岩戸に隠れてしまった「天照大御神(アマテラスオオミカミ)」に出てきてもらうために大暴れしながらサカキ(柴)を根こそぎとる、という内容。神楽殿では観客と柴を引き合うのですが、祇園祭のそれは子供心にめちゃくちゃ恐ろしく、ヤンチャな子供(概ね小学校高学年~中学生のお調子者男子)が柴で太玉命をはたいたりすると、神楽殿から飛び出て100m位その子の後ろを全力疾走で追いかけ、柴でメッタ打ちにしていました(←子供時代にはこう見えた)。それを親子で目の当たりにし「悪いことをするとああなるよ」と恐ろしい教訓を受けていたものです。
一方、福良天満宮の「太玉命」は怖い顔ながらもまあまあ温和↓
子どもだってお行儀よく柴を神楽殿で叩いているかぎりシバかれることはないので号泣する子はまだこの段階ではそれほどいません。しかし、柴引では最後に小さな子供を太玉命に預けて厄払いをしてもらうことも。預けられた子供はさすがに号泣するかブルーで、私の親戚の息子3才はこのとおり↓
「これぞ柴引!」という感じのベストショットです。
ちなみに「太玉命」は通常一人ですが「多神柴引」という演目ではたくさんの太玉命が登場。国内でも福良天満宮だけのユニークな柴引です。私はスケジュールの関係でこの多神柴引を観ることができませんでしたが、ヤンチャをしたらやはりみんなから追いかけられるのでしょうか?一度見てみたいものです。
夏祭りの見逃せない伝統演目(2)「赤獅子連の舞納め」
例大祭の朝から行われる獅子舞。舞いはじめのお清めに始まり、日中にはご祈祷として一般民家の中にも(!)舞い込んでいきます(祈祷希望者は要申し込み)。そして夜には舞い納めがあるのですが、境内の参道を何度も激しく舞う姿は一見の価値あり↓
最後は天狗が、奉納された久家本店さんの清酒「一の井手」の樽をカーンと割って舞い納め↓
赤獅子連の方たちの奉納も終了↓
この後、カーンと割った樽酒は無料で観客に配られるのですが、紙コップなら無料、枡入りなら300円という粋な計らい。お味もまろやかでこの後の神楽をさらに楽しむための景気づけになりますよ。
夏祭りの見逃せない伝統演目(3)「八雲払い(大蛇退治)」
2年前に取材で訪れた広島県の広島神楽を見た際の演目が「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」でした。福良天満宮で行われる「八雲祓い」はまさに同じ内容で、古事記に出てくる神話の一つ。
天界で大暴れして天照大御神をビビらせ岩戸に隠れさせてしまった須佐之男命(スサノオノミコト)。当たり前ですが天界を追われました。出雲の地を訪れた須佐之男命が出会ったのは、8人いた娘の7人を大蛇に生贄に取られ、最後の一人も生贄に差し出さなければいけなくなった老夫婦。須佐之男命はその大蛇を退治するので娘を嫁に欲しいとお願いし成敗する、という内容です。
この神楽はストーリー性もさることながら、舞いも演出も各地でダイナミック。大蛇が登場すると照明も変化して禍々しさが表現されます↓
広島で見たときはホールで行われた神楽だったので成敗シーンはドライアイススモークが使用されましたが、福良天満宮はナント花火!
グルグル回る花火も登場し、戦いの荒々しさが表現されます。
1時間越えの演目ではありますが、ストーリーが分かっていると神楽の内容も楽しく見ることができます。
福良天満宮の例大祭はお神楽の有名な演目(岩戸開きなど)が朝から晩まで目白押しなので、事前にその内容をチェックしておくのがおススメです。
夏祭りの見逃せない伝統演目(4)【番外編】「お菓子撒き」
伝統演目ではありませんが、子どもも大人も喜ぶ福良天満宮例大祭の伝統イベントが、夜9時前に行われる柴引後のお菓子撒き↓
あれほど怖がられていた柴引の太玉命ですが、お菓子撒きが始まると老若男女揃って「こっち、こっちー!!」と黄色い声が投げかけられます。さすが臼杵市民、「それはそれ、これはこれ」がハッキリしています。そしてその歓声が決してイヤではない太玉命。神楽殿から飛び出てさらに遠くに向かってお菓子を投げまくるので会場はヒートアップしてカオス状態に↓
このように朝から晩まで伝統芸能とイベントが盛りだくさんで行われる福良天満宮の夏祭り。もちろん1回ですべての演目やイベントを観たり参加したりすることはできないと思うので、毎年少しずつそれぞれの伝統芸能やイベントを堪能してみてください。
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