昨年、実家レストランの手伝いで海添(かいぞえ)地区の常連さん宅へ配達に行く道すがら、
「なんかめっちゃ凄い家が建ち始めた」
と気になる建物を発見。
完成が近づくにつれそのスタイリッシュ度合いは増し、臼杵では見たことがないような建物の全容が現れました↓
海添に住む友達に尋ねると、本当に臼杵は狭い世界で、家主さんは私の知り合いでした。
しかも「お菓子屋さんをオープンするらしいよ」と聞き、取材熱が急上昇。
今回はお菓子の美味しさはもちろん、そのコンセプトにも共感せずにはいられない「コティディアン」をご紹介します。
オーナーは移住者
妻の貴絵(きえ)さんと夫の涼太朗さんが、当時4歳の息子・S君と共に2017年に移住してきた青木家。移住前は二人とも大分市内に勤務し、金池地区(大分市街ど真ん中)に住んでいました。大分県内としては「都会生活」といえる生活をしていたのです。
貴絵さんは地元雑誌社で編集をしていましたが、S君の出産を機に2015年まで育休。
職場復帰して取材で臼杵を訪れることが何度かあり、
「臼杵って子育て環境がいいなぁ」
と感じていたそうです。
金池地区には自然は皆無。こども園も家から一番近いところに通わせたいと思ってもできないのが都会生活なのです。何をするにも時間のかかる送り迎えが必要になり、当時は子育てに関わる環境が少しストレスだったと言います。
一方臼杵市は海も川も山も比較的全てが近い距離にあり、地域の人たちは少子化で子供を大切にしてくれ、一番近いこども園に行きたければすぐ入園できます。
加えて子供に何を食べさせるのか?という食の選択。
「子育てと臼杵との出会い」。これが臼杵市への移住のきっかけとなったのです。
「美味しくて体にも安心なお菓子」
子どもがお菓子を食べられるようになってくると、何が入っているかよく分からない市販のスナックを食べさせていいのか?と日々の食に不安に感じる保護者は多いと思います。
青木家も「子供が美味しいと感じ、かつ体に良いもので子育てしたい」という想いが強くなり、化学肥料を使っていない臼杵の「ほんまもん農産物」には特に興味を覚えたそうです。
そして、お子さんのために手作りした「おからドーナツ」がコティディアン原点のお菓子。材料を吟味して美味しものを作るというコンセプトが形になった経験でした。
そんな矢先、知り合いから「臼杵市が地域おこし協力隊を募集している」という情報をゲット。もし採用されれば、涼太朗さんの職場は臼杵からでも通勤圏内、貴絵さんも収入を得つつ理想の環境で子育てができる!ということで即エントリーフォームを送信したのです。
「こうありたい」と強く理想を描くとなんだかいろいろなことがトントン拍子で実現していきます。移住者の多くが経験している感覚だと思います。
イベント出品から店舗経営へ
2017年に移住してきて、2022年1月11日に店舗を構えた「コティディアン」。実はお菓子の販売は、2017年10月から始まったほんまもん農産物のファーマーズマーケット「ひゃくすた」と共にスタートしていました。
臼杵市を中心とした場所で生産された農産物をふんだんに使ったお菓子は「美味しくて体にいいもの」を求める方には特に好評。
写真は私がテイクアウトして撮影したレモンカードタルト(左)とかぼちゃとアーモンドのタルト(右)です。
レモンカードタルトのレモンは偶然にも私の同級生の畑のレモンを使用。そして、かぼちゃは地元の高校生が栽培した無農薬の鶴首かぼちゃを使用しています。
「体に優しい」と聞くと味もほんわかしたものかと思いきや、それぞれにインパクトのある味や食感が楽しめます。爽やかですが力強いレモンそのものの味。滑らかな南瓜の層と下に重なるアーモンドの食感が子気味よく、最後の層であるプルーンペーストが上の二つの層の甘さを引き締めてくれるのです。
「何だろうこれ?」
と地産食材の美味しさに加え楽しさも味わえるお菓子でした。
店舗内ではタルト類の他、ほんまもん農産物を使用した焼き菓子も販売しています。
空間とコミュニケーションを楽しむ場に
ちょっと話は変わりますが、皆さんのお住まいの地域に「回覧板」は毎月回ってきますか?臼杵市では区費を払うと広報とともに回覧板が回ってきます。
青木家が住む南海添地区にも回覧板はあるのですが、貴絵さんは編集経験を活かし、それまでもあった南海添の情報チラシ「あげんこげん南海添」(訳:あげんこげん=あんなこんな)を引き継ぎ、月一で製作しています。地域の情報を取材し掲載しているのです。これはどこにでもあるものではなく、私は南海添で初めて見ました。地域のコミュニケーションツールとしてとてもいい試みだなぁと感心したのです。
「2017年に臼杵に移住してきて、ご近所さんが良くしてくれました。今の自宅兼店舗を建てる時も空き地情報などご近所さんからお話をいただいたのです。だから何か地域の為にできることを少しずつやっていきたいし、お店がそういう役割を出来たら嬉しい」
という想いは回覧板にもお店のコンセプトにも詰まっています。
山口県の建築家にお願いして設計してもらったお店はスタイリッシュな中にもゲストがゆったりくつろげる空間があります。
エントランスの温かい木目と銅板ドアが落ち着いた雰囲気を演出。
中に入ると薪ストーブで燃える焚火の心地よい香り。
来店した女性は「こんな台所欲しい~!!」と思わずにはいられない↓
振り返れば燦々と陽が降り注ぐ南向きのカウンター席
暖かくなったらここにはわんちゃんもOKのテラス席が登場します↓
外観も中もおしゃれで素敵。「地域の方にコミュニケーションの場として利用して欲しい」という貴絵さんの想い通り、春になったら海添の方たちが「あげんこと、こげんこと」テラス席でワイワイ楽しむ風景が目に浮かんできます。
店名のまま「日常」を大切にしたいという想いが伝わる素敵な空間とお菓子の数々。
是非皆さん楽しんでみてください。
<コティディアン>
住所:臼杵市大字海添191番地
電話:080-5249-3480
営業時間:10:00-16:00
店休日:木曜・金曜・土曜
インスタ:@quotidien_o
開業前に時間をかけるのも一つの方法
今回貴絵さんから移住検討者(起業を考えている方)へのアドバイスもいただきました。
「移住してきてすぐに開業する必要はないのでは?」
という選択肢です。
都会でサラリーマンをしていて見知らぬ土地に来てすぐ開業ということに不安を感じている方は、まずは大分市など職業選択の幅が広いところで一旦サラリーマン生活をして(臼杵から通勤しながら)、並行して開業準備をしてもいいと思うのです。青木家のように店舗開業までに結果約5年かかった間に地域の方との信頼関係が構築でき、地域性や市場の調査をしたり、空き家物件を直に吟味したり、資金計画を立てなおしたり、数年かけて地を固めるのも一つの方法だと思うのです。生活をしながらお店や商品のコンセプトもしっかりとしたものになると思います。
100人いたら100人の移住のカタチがあると思います。
まずは臼杵市役所の「協働まちづくりグループ」に問い合わせて、いろいろな相談をしてみてくださいね。
【関連サイト】
臼杵市役所移住サイト「うすき暮らしナビ」
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