八町大路火災からの復活 その3「松田玉香園茶舗」
- 藤谷 愛
- 5月28日
- 読了時間: 5分
更新日:5月30日
昨年12月にこのブログで「パパイヤの人」という記事を書きました。
臼杵には「○○さん」ではなく「○○の人」という感じで呼ばれ、市民間でもそれで通用する「代名詞の人」がかなりの数存在するのです。
例えば「妖怪の人」、「ほら貝の人」、「タチウオの人」・・・。
市外の人は「ナニそれ?」と思っても、市民ならば「ああ、あんしか(あの人か)」と、その人の映像が浮かんでいることだと思います。
そんな数ある代名詞の人の中でも、臼杵の「○○な人」の筆頭はこの方でしょう。
今回は、八町大路火災で店舗が全焼するも、前に進むしかない!と懸命に頑張っている「黄色い人」こと徳丸香枝さんのお店「松田玉香園茶舗」をレポートします。

3代で繋いできたお茶屋さん
昨年11月末の八町大路火災で全焼した徳丸さんの「松田玉香園茶舗」は中央通り商店街(通称:八町大路)の丁度真ん中に位置していました。約400メートルある中央通り商店街はそのほぼ真ん中で本町と畳屋町に区切られていますが、畳屋町の東のスタート地点にあったのです。
「火元は道を隔てた向こうだったのに、あっという間に店の裏の建物に火が燃え移り、結局はうちも全焼してしまった」と言う徳丸さんは、これが今のお店の姿をとどめる最後と腹をくくり、焼けていく姿を携帯で撮り続けました。辛い時間ですが店の歴史や建物への愛着を思うと、その時出来たのは最後の姿を映像に残すことだけだったのかもしれません。

徳丸さんが愛情を注いだ松田玉香園茶舗の歴史は1965年に遡ります。
祖母と母が「松田のお茶屋」として始めたというお茶屋さんは、当初新町にありました(現「ラウンジ久月」のあたり)。お母さんがお茶の入手ルートを持っていて、最初は佐伯からお茶を仕入れていたそうです。
その後、1969年に畳屋町に移転。当時の商店街はお店がひしめき、臼杵、津久見、野津も商圏とするような一大商業地だった為、「屋号をきちんと作り直そう」と言うことになり、香枝さんの父方の祖父の名前(玉蔵)と一人娘の徳丸さんの名前(香枝)から一文字ずつ取り、「松田玉香園茶舗」と名付けたそうです。
移転した当時徳丸さんはまだ小学生になったばかりでしたが、昔ながらのお茶箱に入った茶葉を家族で計りながら袋詰めした作業は今も記憶に残っていて、そのお茶箱も今回の火事で焼けてしまったのが本当に残念、としみじみ語ってくれました。
学生の時は吹奏楽にハマり、社会人となってからは栄養士として働くなどしていましたが、大きな転機は2004年。若くして亡くなったお母さんが広げた取扱商品やお茶道具の数々をお父さんが引き継ぎ営業していましたが、そのすべてを徳丸さんが継ぐことになったのです。
若い世代が気軽に立ち寄れる場所に
「引き継いだ当初、継いだものをしっかり販売していきたい、という想いと同時に、少子化が進むこの町で、若い世代にも急須でお茶を淹れることを引き継いでいってもらいたいという気持ちがありました。」
と言う徳丸さん。「若い人が気軽に立ち寄れるお茶屋」を目指し、抹茶ソフトをはじめとするソフトクリームの販売を始めたのもその一環です。

被災した後もその気持ちは変わっていません。元散髪屋さんを改装し仮店舗として営業を行っており、カウンターを設置して、お茶やソフトクリームを気軽に楽しめるコーナーを作っています。
何かを販売する場というよりも「おしゃべりの場」というような気軽な雰囲気のするお店で、徳丸さんと会話しながらお茶を楽しむことができます。

おすすめ商品
私も取材させていただきながら、徳丸さんがつぎつぎ淹れてくれるお茶などを味わったわけですが、その中でおすすめの3品をご紹介します。
1) 煎茶(八女)

取材時に淹れてくださったのが八女の煎茶なのですが、1杯目と2杯目の味がグンと変わる「味変」が楽しめます。1杯目を表現するならばパンチの効いたコク。決して苦いわけではなく、コクがあるのです。そして2杯目は一気にまろやかになります。
以前住んでいた埼玉県狭山市もお茶の有名どころで、70度台まで温度を下げたお湯で出るお茶の甘みも魅力がありましたが、味変するお茶も楽しいなぁと感じたお茶でした。
2) 焙じ茶(宇治)

最近個人的にハマっている焙じ茶なので実際に買ってみました。最近気候も暑くなってきたので、冷やして飲んでいますが、さっぱりしていて食事でもおやつ時にもよく合います。お鍋にミルクを入れてその中で焙じ茶を煮出したらロイヤルミルクティーみたいになって美味しそうな感じもするので、今度試してみようと思います。

3) 抹茶ソフトクリーム

かなり濃厚な抹茶の風味が味わえるソフトクリームです。外国人、旅行者、地元の高校生などなど、暑い日のおやつにおすすめです。

6月は夜市で行きたい
「若い人たちにぜひ来てほしい」という徳丸さんが次に行う企画は、毎年恒例の夜市!今年は6/21(土)から約1か月に渡って毎週土曜日に行われ、100円から買い物や遊びを楽しめる、昭和時代を彷彿とさせる子どもに大人気の恒例イベントです。
徳丸さんはフリマやお菓子のつかみ取りを予定しているそうなので、大人も子どももぜひ黄色いお茶屋さんを目指して遊びに行ってみてください。
ところで、多くの人が徳丸さんの「黄色い人」の由来に疑問を持っていると思います。私も同様の疑問を抱えていましたが、今回率直に聞いてみました!
徳丸さん曰く「好きだから!」だそうです(笑)
何か深い意味でもあるのかと思いましたが、元気をもらう色だし、見たら二度見して覚えてくれるでしょ(←その通り)、とのこと。

火災という辛い出来事の中でも声をかけてくれる方に本当に勇気をいただいている、とおっしゃる徳丸さん。これからも「うすきいろ」のイエローカラーで臼杵に元気を振りまいてくれます。

<松田玉香園茶舗>
住所:〒875-0041 大分県臼杵市臼杵221
電話:0972-77-5329
*以前の電話番号から変わりました。お間違えなく
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