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八町大路火災からの復興 その5「他市の状況から学んでみる(後編)」

  • 執筆者の写真: 藤谷 愛
    藤谷 愛
  • 10月19日
  • 読了時間: 5分

前回は小倉の商店街や旦過市場の歴史・現状について書きました。

今回も引き続き、シリーズ「八町大路火災からの復興」で視点を変えてみた小倉北区の旦過市場レポートです。

2022年に起きた2度にわたる大火災を経た旦過市場を見学してみました。

小倉北区の旦過市場
旦過市場。右側が再整備区域

旦過市場の名物の一つ「カナッペ」を実食

前回偶然発見した小倉かまぼこが作る「カナッペ」。

小倉かまぼこのカナッペ
前回も最後に登場した「カナッペ」

初めて見たものだったので、食べ歩きしてみることに。


お店を離れながらがぶりと頬ばって驚き。

「練り物ってこんなにコショウでパンチが効いてたっけ!?」

と感じ立ち止まる。

衝撃の一口目!「なぜビールを持ってないのか?!」と後悔
衝撃の一口目!「なぜビールを持ってないのか?!」と後悔

臼杵で食べる天ぷらは、じゃこ天では魚の風味が香ばしく、エソ天なら臼杵人特有の「甘いもの好き」が発揮されたほんのり甘い味付け。しかしカナッペを食べてまず欲しくなるのはビール!

「昼間だけど生ビールこの辺でないですか?」

と聞きたくなるほどコショウの塩梅がいい。しかも揚げたてなので周囲を巻いた薄いパンへの第一噛みではカリカリと音を立て、歯が行き着く先はパンパンに膨れたもっちり練り物。食感も最高なのです。

店から6歩離れていましたが、すぐに戻って「やっぱり10個ください」と再注文しました。


折角だったので、ここの店主さんに少し火事についても話を伺うことにしました。


実は旦過市場の役員でもあった老舗の店主

お話をお伺いした時は、お店の歴史など全く知らずに立ち話でいろいろ質問させていただいたのですが、帰宅してお店のことを調べると、歴史あるお店だったことが判明!


「小倉かまぼこ」は創業大正9年で、同じく大正初期に始まった旦過市場の歴史そのものと言っても過言ではないお店。その店主でもある森尾さんは現在4代目。この小倉北区で生まれ育ったそうです。

小倉かまぼこの森尾社長
小倉かまぼこの森尾社長

私が八町大路火災の後ですごく気になっていたのが

「臼杵の今後100年の町づくりと商店街の復興とをどうやって絡ませていくのか」

という点です。私的にはそのポイントが「建築景観」、「食文化」、「歴史」だと思っています。

例えば、商店街にある空き家・店舗、そして今後の復興プランで立つであろう建物。その中に入るテナントがどんなお店でもいいわけないのです。私としては旦過市場の人々が市場の整備後にできる建物内に入るテナントについてどういうプランがあるのか聞いてみたかったので率直に聞いてみました。


「整備後の旦過市場は当然新しくなって、今あるこの古さを残すことはできません。また防火・防災上の問題でその素材や、建物同士のスペースなど従わないといけない法令も当然あるでしょう」

ここまでは八町大路も同じです。景観条例に合わせて建物の面合わせやファサードを揃えたり、木材や漆喰を使用するなど、建築においてその重点地区では好き勝手にはできません。しかし、市場の思いを活かすとなるとやはりこの点でしょう。


「旦過市場は再整備を見据え株式会社を作って、新たに入る店舗テナントを市場の状況に合わせて選ぶようにしています。市場の雰囲気に合う、そして市場に足りない業種を入れるなど、バランスを考えながら選定するようになると思います。」


さらに話をお伺いすると、被災や高齢化が原因で廃業したお店などもあり、折り合いがつけばそのような土地を株式会社が買い取り、市場に合う新たなテナント誘致のツールにするということも考えているそうなのです。


また、市場の中ではチェーンのスーパーマーケットも営業しているのですが、これも「市場に足りないものを補う」一環。「チェーンスーパーが地域の商売を潰す」という考えではなく、市場を補う存在になっているそうなのです。

「このエリアにいかにしてお客さんを呼ぶか?」

自店の集客だけではなくて、エリアとして考えるという点が見て取れます。


一方、近年の物価高騰による資金難なども当然あります。2026年中にできる大型施設の2階(飲食店部分)も当初は株式会社が買い取る予定でしたが、資金難のためこの8月に断念する旨を記者発表しました。


「市場の人の思いを一つにまとめていくことは本当に大変ですし、難しい点は多々あります。でも旦過市場を以前と同じように地元の人が買い物に来て、旅行者も楽しめるいい場所にしていきたいと思うのです。」


森尾さんの言葉の一つ一つに、立ち話だったのですが心を揺さぶられました。

旦過市場と続く商店街ではイベントも多数で毎月何かやっている
旦過市場と続く商店街ではイベントも多数で毎月何かやっている

臼杵の町づくりという観点からは切り離せない「八町大路の復興」

①    株式会社化して市場の思いをまとめ、エリアとして集客していく

②    空き店舗を埋めるテナントは選定すべし

③    堅実なファイナンシャルプランニング


など、ちょっとした立ち話で「あぁ、こんなにやらなければいけないことがあるんだ」と圧倒されました。

そしてやっぱりできたこと、できないことがあるのです。でもどれも失敗ではなくて今後の町づくりに向けての「やるべきこと」のリストアップに繋がると思います。


八町大路火災跡地の地権者やいろいろな分野の方々と知恵を出し合い、今後100年に向けてどのようにしていくのか。臼杵市はもちろん、いろいろな人たちの助けを借りながら長く賑やかに続く商店街にしていけたら、と思います。そして、被災者やその事業に関わっている方々が活き活きと働くことのできる八町大路になることを願ってやみません。


今回お忙しい中突然の質問に丁寧にお答えいただいた「小倉かまぼこ」の社長・森尾泰之氏にこの場を借りてお礼申し上げます。来年またカナッペ買いに行きます!(←生ビール持参で)


旦過市場を離れ駅に向かう途中で見慣れた感じのポスターを発見!

小倉城竹あかり
観覧料を払ってでも観る竹ぼんぼりの祭り・・城があって羨ましい

臼杵も11/1(土)と2(日)は「うすき竹宵」。 臼杵と小倉、いろいろと繋がりがあって訪れるのが楽しみな町になりました。


【関連サイト】


旦過市場の歴史と再整備について(北九州市役所HPの資料から)

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